「システム開発を行いたい」「高価な工場設備を購入したい」
そんな時に使える補助金のご紹介です。国が募集する補助金なので全国の事業者が対象となります。
2025年4月25日より、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(通称:もの補助)の公募がスタートしました。今回はこの補助金についてご案内します。
※この記事ではお問い合わせの多い「製品・サービス高付加価値化枠」に絞って説明をします。
海外事業を対象とした「グローバル枠」(補助上限額3,000万円)も設けられています。
グローバル枠について気になる方は公募要領をご参考ください。
1.補助金の概要
この補助金は、「革新的な新製品・新サービス開発」や海外需要開拓を行うための設備投資等の一部を補助する目的となっています。
「革新的な新製品・新サービス開発」とは、新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発することをいいます。
単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは該当しません。また、業種ごとに同業の中小企業者等において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発も該当しない、とされています。加えて既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外となる点に注意です。
つまり、「設備投資(高度・高性能な生産設備の導入・システム開発)により、新サービスを開発することを応援するための補助金」という位置づけになります。
2.補助金額・補助率

対象経費のうち1/2(小規模事業者であれば2/3)が補助される計算となります。
従業員数によって補助金額が変わる点に留意しましょう。
※「小規模企業者」とは、従業員20人以下(卸売業・小売業・サービス業は5人以下)の事業者等を指します。なお、従業員は正社員・パート等の区別はなく、「解雇予告を必要とする者」とされます。
例えば、
・従業員2人の会社:対象経費1,125万円(税抜き)のときに、補助率2/3の750万円:助成限度額
・サービス業、従業員6人の会社:対象経費2,000万円(税抜き)のときに、補助率1/2の1,000万円:助成限度額になる計算です。
3.スケジュール

申請締め切りは7月25日(金)17:00(厳守)となっています。
助成対象期間は、交付決定日 から 10か月 です。この期間内に契約・実施・支払が完了する経費が助成対象になります。
機械の納期(搬入・設置)やシステム開発が間に合わない、といったトラブルが良くあります。
先に機械の販売業者やシステム開発業者とこのあたりの期間を確認しておきましょう。
また、オンライン(ZOOM等)の口頭審査がある点も注意したいところです。
4.補助対象外のもの
※お問い合わせが多いものを抜粋しています。詳細は公募要領をご確認ください。
・主たる課題の解決そのものを他者へ外注又は委託する事業、及び本事業の主たる部分を他者に外注又は委託し、企画だけを行う事業
→自社側で課題を把握し、主体的に対処する事業である必要があります。
・事業の実施にあたり、実質的に労働を伴わない事業及び専ら資産運用的性格の強い事業。 (例:無人駐車場(コインパーキング等)運営にあたって単に機械装置の購入のみを行う事業等)
・主として従業員の解雇を通じて、本補助事業の要件を達成させるような事業。
・同一法人・事業者が今回の公募で複数申請を行っている事業。
→親会社が議決権の50%超を有する子会社が存在する場合、親会社と子会社は同一法人とみなし、いずれか1社の申請しか認められません。
・過去又は現在において提出された、他の法人・事業者と同一又は類似した内容の事業。
→他の申請書とまったく同じ事業計画書(流用)はNGです。
・国庫及び公的制度からの二重受給となる事業。
・間接直接を問わず国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する過去又は現在の他の補助金、助成金、委託費等と同一の補助対象経費を含む事業
→他の補助金と重複してはいけません。
・公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買い取り制度等との重複を含む事業、及び同一又は類似した内容の事業。
→国の補助金を使って、国のお金を得る事業はNG、という意味になります。
医療関係であれば保険を利用しない自費診療のサービスであれば対象になります。
5.対象となる事業者
※お問い合わせが多いものを抜粋しています。詳細は公募要領をご確認ください。
本補助事業の補助対象者は、日本国内に本社及び補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有する、以下)のいずれかに該当する事業者になります。これらに該当しない組合又は連合会や財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)、医療法人及び法人格のない任意団体は補助対象外です。
※実施場所について、申請時点で建設中の場合や土地(場所)のみを確保して建設予定である場合は対象外となる点に注意です。
・一般的な中小企業者
・小規模企業者・小規模事業者
※小規模企業者・小規模事業者は補助率が2/3ですが、採択後および交付決定・補助事業実施期間終了日までの間に小規模企業者・小規模事業者の定義からはずれた場合は、補助率1/2となります。
・組合又は連合会
・特定非営利活動法人
以下の要件を全て満たす特定非営利活動法人であること。
①「特定非営利活動促進法」(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人であって、広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行うものであること。
②従業員数が300人以下であること。
③「法人税法」(昭和40年法律第34号)第2条第13号に規定する「収益事業」を行う特定非営利活動法人であること。
④認定特定非営利活動法人ではないこと。
⑤交付決定時までに本事業に係る「中小企業等経営強化法」第17条に規定する「経営力向上計画」の認定を受けていること。
・社会福祉法人
以下の要件を全て満たす社会福祉法人であること。
①「社会福祉法」(昭和26年法律第45号)第32条に規定する所轄庁の認可を受け設立されている法人であること。
②従業員数が300人以下であること。
③「法人税法」第2条第13号に規定する「収益事業」を行う社会福祉法人であること。
6.補助対象外となる事業者
・本補助金の申請締切日を起点にして16ヶ月以内に以下の補助金の補助金交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)、又は申請締切日時点において以下の補助金の交付決定を受けて補助事業実施中の事業者。
①中小企業新事業進出促進補助金
②中小企業等事業再構築促進補助金
③ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
なお、複数の補助金に同時期に応募申請していただくことは可能ですが、複数の補助金に採択された場合は、交付を受ける補助金を1つだけ選択して、交付申請を行ってください。選択せずに、複数の補助金で交付決定を受け、補助金を受領していたことが発覚した場合は、交付決定日が遅い方の補助事業の交付決定を取り消し、補助金の返還を求めます。
・申請締切日時点において、過去のものづくり補助金の「事業化状況・知的財産権等報告書」を未提出の事業者。
→最近のものであれば、提出受付をまだ行っているものもあるため、該当する場合は早めに事務局に相談しましょう。
・申請締切日を起点にして、過去3年間に2回、本補助金の交付決定を受けた事業者。
・以下に該当するような、みなし大企業(一部抜粋)
(1)発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している
(2)発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者等。
(3)大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者等。
・公募開始日時点において、確定している(申告済の)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者。
7.補助対象要件
基本要件
以下の基本要件①~③を全て満たす補助事業終了後3~5年(任意で選択可)の事業計画を策定し、かつ従業員数21名以上の場合は基本要件④も満たすこと。



→賃金引上げの要件に注意です。
特に「従業員及び役員は給与支給総額目標値及び1人あたり給与支給総額目標値を算出し、従業員及び役員それぞれが目標値を達成することが必要」となっている点に注意です。
以前は役員を含む給与支給総額の目標値設定となっていたため、従業員は昇給させず、役員報酬を上げる形を取っている企業がありましたが、そちらがNGとなりました。従業員の昇給も続けることが必要です。


8.補助対象経費
・本補助事業では設備投資を行うことが必須です。 設備投資は必ず単価50万円(税抜き)以上の機械装置等を取得して納品・検収等を行い、適切に管理を行ってください。
→購入したものは勝手に処分(売却・廃棄)しないようにしましょう。事務局に事前相談です。



このほか、「運搬費」「技術導入費」「知的財産権関連経費」「専門家経費」「クラウドサービス利用費」などが対象経費となっています。詳細は公募要領をご確認ください。
・補助対象経費(税抜)は、事業に要する経費(税込)の3分の2以上であることが必要です
→本体以外の付属経費が多いものは対象外です。
・交付決定日よりも前に発注・契約・購入を行った経費はいかなる理由があっても補助対象外となります。
9.この補助金に適さない人
・設備投資額が大きくない人
申請書や事務手続きが多くなることが予想されます。コストパフォーマンスを考えると、目安として設備投資額が700万円以下の方は他の補助金をおススメします。
・すぐにお金が欲しい人
補助金は①採択(合格)→②発注・購入、支払い→③報告書類提出→④清算払い、の流れで進みます。
①~④まで1年半ほどかかることも珍しくありません。その間、事業者様がこの経費額を建て替えることとなります。資金繰りを考えると融資も検討する必要があります。
・パソコン作業が苦手な人
この補助金はインターネットでのオンライン申請となります。行政書士などの有資格者でも代理申請が認められない可能性があります。代理申請をした時点で不採択(不合格)となってしまう補助金が増えてきているため、事業者様自身で申請する心づもりでいた方が良いです。あまり難しい作業ではありませんが、エクセルやワードのソフトが使えない方はお勧めしません。
最後に
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)についてポイントを絞ってご案内させて頂きました。詳細についてはHPや公募要領(ルールブック)を参考に検討してください。
一般的に補助金額が大きくなるにつれて、求められる申請書のレベルが高くなり、作業の手間も増えます。この補助金は金額が大きいため、相当程度の申請書と対応が求められます。
申請にあたっては早めに準備することが必要です。当事務所では補助金に強い中小企業診断士・行政書士(経営展開サポート事業・再構築補助金・ものづくり補助金の採択実績多数)がサポート対応していますので、お気軽にご相談ください。
なお、問い合わせ状況によっては早めに対応受付を終了させていただきますのでご了承ください。
参考ページ
本記事は2025/4/25に公表された事業環境変化に対応した「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(第20次公募)の公募要領を参考に作成しています。最新情報・更新についてはホームページをご参照ください。




