中小企業の資金調達において、銀行融資は依然として重要な選択肢の一つです。しかし、すべての申込者が希望する融資を受けられるわけではありません。銀行や公的機関は、融資の審査基準を厳格に設けており、一定の条件を満たさない場合には融資を断られることがあります。
本記事では、融資が通りにくい方の特徴と、その対策について詳しく解説していきます。
個人の信用情報に問題がある人
銀行や日本政策金融公庫などの金融機関が審査を行う際、まずチェックするのが申込者の信用情報です。過去に借入金の延滞や債務整理(自己破産・個人再生・任意整理など)の履歴がある場合、融資が厳しくなる可能性があります。
信用情報で問題視されるケース
- 過去の返済延滞(61日以上または3か月以上)
- クレジットカードの長期未払い・強制解約歴
- 消費者金融などで多重債務を抱えている
- 自己破産・個人再生をしてから5~10年以内
信用情報は CIC、JICC、KSC(全国銀行個人信用情報センター) などの信用情報機関で管理されており、これらのデータをもとに審査が行われます。特に、銀行融資では「個人信用情報の事故履歴(ブラックリスト)」があると、融資はほぼ不可能になります。
経営者個人の信用情報も重要な審査項目です。以下のような場合は特に慎重な対応が必要です:
個人的な借入の返済遅延歴がある
税金や社会保険料の滞納がある
過去に経営破綻の経験がある
対策:まずは個人の信用情報の改善が先決です。特に税金や社会保険料の滞納がある場合は、これらを解消することが重要です。
資金使途が不明確な人
「運転資金(人件費や広告代など見積もりが取れない費用に対する支払い)として」という漠然とした申請では、融資は通りにくくなります。以下のようなケースは特に注意が必要です:
- 資金使途が具体的に説明できない
- 必要金額の根拠が不明確
- 返済計画が曖昧
対策:資金使途を具体的に説明できる資料(見積書、事業計画書など)を用意し、その資金でどのように売上や利益を伸ばしていくのかを明確に示すことが重要です。
経営計画が不十分な人
「どんぶり勘定」、「なんとなく」で経営している印象を与えてしまうと、融資は極めて困難になります。以下に当てはまる方は要注意です
- 事業計画書が作成されていない
- 市場分析や競合分析が不足している
- 数値計画が現実離れしている
対策:
実現可能性の高い事業計画を作成し、市場環境や競合状況も踏まえた上で、具体的な数値目標と達成のための施策を明確にしましょう。
金融機関は「貸したお金がきちんと返済されるか」を最も重視します。そのため、 事業計画書の内容が甘いと融資を受けられない可能性が高い です。
事業計画書でチェックされるポイント
- 事業の具体性があるか(市場調査・競合分析が十分か)
- 売上・利益計画が現実的か
- 資金使途が明確か
- 返済計画が合理的か
単に「売上が上がる予定」ではなく、「なぜ売上が上がるのか」「どのように利益を出していくのか」を具体的なデータとともに説明することが重要です。
代表者の経歴・実績に不安がある人
金融機関は、 経営者の過去の経験やスキル もチェックします。全く経験のない業界で起業しようとする場合や、過去に経営に失敗した履歴がある場合は、審査が厳しくなることがあります。
経歴で不利になるケース
- 業界経験がまったくない業種での創業
- 過去に会社を倒産させた経歴がある
- 転職回数が極端に多く、経営に必要なスキルが疑われる
対策:こうした場合は、 事業計画書でしっかり補強することが重要 です。例えば、業界未経験であっても「この分野の専門家と協力する」「研修や資格取得をして準備している」といった説明があると、金融機関の評価も変わります。
自己資金がほとんどない人
事業融資では、自己資金の割合も大きな審査基準の一つです。特に、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資では、自己資金ゼロの状態では審査に通るのが難しくなります。
自己資金が重要になる理由
- 事業への本気度を示す指標になる
- 「借入に頼りすぎていないか」を見る
- 一定のリスク負担を自分でもしているか確認する
対策:
一般的には、 融資額の1/3程度の自己資金があると審査が通りやすい と言われています。例えば、500万円の融資を希望する場合、200万円程度の自己資金があるのが理想的です。
6. 現在の業績が著しく悪い人
既に創業されている方に限られますが、金融機関は過去(用意できる場合は3期分)の決算書を重視します。特に以下のような状況は要注意です。
審査で見られる財務指標
- 売上高の推移(前年対比で減少していないか)
- 営業利益・経常利益が赤字でないか
- 債務超過(負債>資産)になっていないか
- 資金繰りが悪化していないか(手元資金の不足)
このように、赤字決算が続いていたり、債務超過に陥っていたりすると、「この会社に融資をしても返済できないのでは?」と判断されてしまいます。そのため、融資を受けるのが難しくなってしまう、ということなのです。
対策:
もし業績が悪化している場合は、 改善計画を具体的に示すことが重要です。単純に「これから頑張ります」と言うのではなく、「どのような施策を打ち、どれくらいの期間で改善するか」を明確に説明しましょう。業績悪化の原因が一時的なものである場合は、その理由と今後の回復見込みを説明できる資料を準備しましょう。
7.コミュニケーションが不足している人
金融機関との関係性も重要な要素です。以下のような態度は避けるべきです:
- 必要な資料の提出を遅延する
- 質問に対して曖昧な回答しかできない
- 経営状況の報告や相談が少ない(2回目以降の融資の場合)
対策:
求められた資料は期限内に提出しましょう。提出が遅れる場合はその旨を連絡することも大切です。
期限内に対応できるかどうか、事務処理の対応能力があるか、という点も見られています。
また融資が受けられた場合は、定期的に経営状況を報告し、困ったことがあれば早めに相談するなど、金融機関との信頼関係を構築することが重要です。金融機関とコミュニケーションを取っておくと、次の融資がスムーズになります。
まとめ
融資の審査をスムーズに進めるために大切なポイントををまとめると、以下のようになります。
✅ 信用情報に問題がないかチェックする
✅ 税金・社会保険料を滞納しない
✅ 自己資金をしっかり準備する
✅ 事業計画書を具体的に作り込む
✅ 業績改善の計画を立てる
✅ 経営者としてのスキルや経験を補強する
融資を受けるためには、 事前準備が重要です。「審査に落ちるかもしれない」と不安な場合は、専門家(中小企業診断士・税理士など)に相談し、しっかりと対策を講じることをおすすめします。