外国人の方が日本で飲食店を開業するには、「経営・管理ビザ(経営管理ビザ)」の取得が必要となります。しかし、ビザの審査は想像以上に厳しく、特に審査官が重視するのが「事業計画書」の内容です。
では、どのような事業計画書を作成すれば、経営管理ビザの取得につながるのでしょうか?本記事では、飲食店での開業を前提に、事業計画書の作成ポイントを詳しく解説します。
1. 事業の具体性と再現性が最重要
事業計画書において最も大切なのは、「この事業が本当に実現可能なのか?」という視点です。審査官は、事業計画がまとまっているかではなく、「実際にお店が開業し、継続できそうか」を厳しく見ています。
どんな飲食店か明確にしよう
「イタリアンレストラン」「韓国風カフェ」「本格インドカレー店」など、業態を明確にしましょう。さらに、イートイン中心なのか、テイクアウトやデリバリーにも対応するのかなど、営業スタイルを具体的に説明することが重要です。
出店場所の理由も説得力を持たせる
「なぜそのエリアで開業するのか」も大事な視点です。たとえば、「周辺に競合が少なく、同郷の住民が多い」「外国人観光客の多いエリアで、母国料理のニーズが高い」など、地域性と需要のバランスを示すことで、実現性が高まります。
2. ターゲットと集客戦略を明確に
飲食店は、どんなに料理がおいしくても、お客様が来なければ続けられません。事業計画書には、「誰に向けた店なのか」「どうやって集客するのか」も明記しましょう。
誰がターゲットなのか
例えば、「駅近くのオフィス街で働くサラリーマン向けのランチ営業」「SNSに敏感な若年層向けのフォトジェニックなスイーツカフェ」など、顧客像をイメージできるように説明します。
どんな方法でお客を呼び込むか
InstagramやTikTok、食べログやGoogleマップなど、どのようなチャネルでお客様にアプローチするのかも重要です。チラシ配布や看板広告、地域イベントへの参加など、地道な方法も効果的です。
3. 収支計画は「根拠のある数字」で組み立てる
「売上」「経費」「利益」をリアルな数字で表現することで、審査官に安心感を与えます。根拠のある収支計画は、事業の信頼性を高める要素です。
売上予測の組み立て方
以下のような前提で売上予測を立てましょう:
- 客単価:1,000円
- 席数:10席
- 回転率:1日2回転
- 営業日:月25日
→ 1,000円 × 10席 × 2回転 × 25日 = 月売上50万円
このように、現実的な数字を積み重ねて根拠を示します。
売上予測の精度を高める
まとまった売上予測が現実的なものとなっているかを確認しましょう。特に開業当初は集客が思うように行かず、ランチタイムやディナータイムでも席が埋まらず、空席が目立つこともあります。そう考えると最初の2~3か月は回転率を落とした計画にすることが現実的かもしません。月別の数値計画を作る形で、半年後に回転率が1,5回転、1年後には2回転、と増えていく計画であれば説得力が増します。
経費も正確に見積もる
家賃・人件費・仕入れ・光熱費・広告費など、想定される経費を漏れなく記載しましょう。初年度は赤字になる場合でも、その理由と改善見込みを説明できれば問題ありません。店舗運営が軌道に乗るであろう時期を見込んで、3年分の収支計画を作っておくと安心です。
資金繰りに余裕を持つ
飲食業は初期投資が大きくかかる事業でもあります。物件を抑える費用(土地・建物の賃借料、保証金)や店舗の内装、厨房機器、設備などを考えると1,000万円程度かかることも珍しくありません。しかも最初は売上が少なく、月別収支で見ると赤字の期間が続くこともあります。このような状況で大切になるのは資金繰りです。預貯金の金額がゼロになってしまうと、食材の仕入れもできなくなり事業継続が難しくなります。精神的に余裕を持つためにも、開業前に融資の準備をしておくのも手です。融資サポートも当事務所で対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
4. 投資額500万円の使い道を明示する
経営管理ビザの条件として、「500万円以上の投資」が必須です。ただし、ただ「500万円を用意しています」と書くだけでは不十分で、その使い道をきちんと説明する必要があります。
内訳を具体的に記載
例として:
- 店舗内装工事:200万円
- 厨房機器・設備:150万円
- 家賃保証金:50万円
- 宣伝広告費:30万円
- 初期仕入・備品:70万円
このように内訳を具体的に記載し、見積書や契約書などの裏付け資料もそろえておくことが大切です。
5. 経営体制と人員計画を示す
経営管理ビザでは、「自らが経営者として事業を行う」ことが前提です。つまり、調理を行う職人ではなく、マネージャー・オーナーとして活動することが求められます。
経営者としての役割を記載
仕入れ管理・スタッフマネジメント・会計・マーケティングなど、経営者としての仕事を具体的に書きましょう。料理は他のスタッフが担当し、自身は経営全体を見るという体制を整えておくとよいです。
雇用計画もプラス要素
開業時に何名のスタッフを雇用する予定か、日本人を雇う予定があるかなどを記載すると、地域経済への貢献として審査上プラスになります。
6. 許認可と店舗確保の状況
飲食店を営業するには、保健所の営業許可が必要です。ビザ申請時点で取得できていなくても構いませんが、取得に向けて準備していることを示しましょう。
また、店舗物件の賃貸契約が内定していれば、契約書の写しを提出すると計画の具体性が増します。
7. 経営者のスキル・経験も重要
申請者自身の経営スキルや飲食業経験も、事業計画書の信頼性を支える大事な要素です。
飲食や経営の経験をアピール
過去に飲食店を経営していた経験、料理の専門学校卒業、関連資格(調理師・簿記など)を持っている場合は、積極的にアピールしましょう。
日本語能力や支援体制も記載
日本語能力試験(JLPT)の合格実績、税理士・行政書士の支援を受けていること、通訳スタッフの配置なども記載すると、日本での事業運営への安心感が高まります。
まとめ|事業計画書は「安心感」のプレゼン資料
経営管理ビザの審査官が見ているのは、「この人にビザを出しても大丈夫か?」という一点です。つまり、事業計画書はそのためのプレゼン資料であり、実現性・継続性・信頼性を数字と説明でしっかり伝えることが求められます。
飲食店開業は夢のあるチャレンジですが、ビザ取得はその第一関門。しっかりと準備された事業計画書を通じて、あなたの想いと現実的な計画を伝えましょう。
ご自身での作成が難しい場合や、専門的なチェックが必要な方は、当事務所へご相談ください。会社設立から許認可申請、ビザ申請、融資まで一貫したサポートをしております。
飲食業は常連さんや顔なじみのお客様ができたり、たくさんの人に喜んでもらえる事業でもあります。最初のスタートが肝心だからこそ、経営管理ビザがスムーズに取得できるよう準備しましょう。