外国人経営者とコンサル
2025年4月5日

銀行口座開設をスムーズに行うためのポイント

口座開設,銀行口座

1. はじめに

近年、金融庁の指導のもと、銀行口座開設時の審査が厳しくなり、企業や個人事業主が新規口座を開設することが難しくなっています。これはマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与対策(AML:Anti-Money Laundering /CFT:Countering the Financing of Terrorism)を目的とした規制が世界的に強化されているためです。

本記事では、マネーロンダリング規制の背景、銀行の対応、そして企業や個人が口座開設を成功させるためのポイントについて解説します。

2. マネーロンダリング規制の強化の背景

マネーロンダリングとは、不正に得た資金を正当な資金のように見せかける行為を指します。国際的な犯罪組織やテロリストの資金源を断つため、各国が規制を強化しています。特に、FATF(金融活動作業部会)による監視や勧告が、日本国内の金融機関の審査厳格化に影響を与えています。

2.1 FATFの勧告と日本の対応

FATFは各国のマネーロンダリング対策の状況を評価し、対策が不十分な国に対して「監視対象国」リストに載せるなどの措置を取ります。日本も2021年にFATFの指摘を受け、マネーロンダリングの対策強化を求められました。その結果、金融庁や各銀行が顧客の取引実態や資金の出どころをより厳しく審査するようになってきているのです。

2.2 日本国内の具体的な規制強化

  • 本人確認(KYC: Know Your Customer)の強化
    • 取引時の本人確認書類の提出が求められるようになりました
    • オンライン口座開設でも、顔写真付き本人確認や補助書類の提出が必要になりました
  • 疑わしい取引の監視強化
    • 高額な現金取引や頻繁な送金が監視対象になりました
    • 金融機関が疑わしい取引を発見した場合、金融庁に報告する義務があります。
  • 法人の取引実態の厳格な審査
    • 企業の実態が不明確な場合、口座開設が拒否されます。
    • 業種によってはリスクが高いと見なされ、追加の審査が行われます。

3. 口座開設が難しいケース

現在、特に以下のようなケースでは銀行口座の開設が困難になっています。

3.1 外国人経営者や海外との取引が多い企業

外国人が代表者である場合、資金の流れの透明性が求められ、通常よりも厳格な審査が行われます。また、海外との取引が頻繁な企業も、マネーロンダリングのリスクが高いと判断されることがあります。

3.2 ビジネスの実態が不明確な企業

ビジネスの実態が不明確な企業は、銀行からリスクが高いと見なされ、口座開設が拒否されるケースが増えています。特に、定款の事業目的(事業内容)が多い場合はどんな事業をやっているか分からないと見られてしまいます。法人登記されているというだけでは不十分で、事業の具体的な証拠(契約書、事業計画、取引履歴など)が求められることがあります。

3.3 現金取引が多い業種

飲食業、貴金属取引、古物商など、現金取引が多い業種はマネーロンダリングのリスクが高いとされ、厳しい審査が行われます。通帳を介さない現金取引が多くなるため、匿名の取引になりやすく、犯罪収益の「洗浄」に利用されやすい、といった点が懸念されます。

4. 口座開設を成功させるためのポイント

銀行口座をスムーズに開設するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

4.1 事業の実態を明確にする

  • 会社の所在地・業務内容を明確にする
    • 事務所の賃貸契約書や営業許可証を準備する。
  • 取引先の存在を証明する
    • 既に取引がある企業との契約書や請求書を提出する。

4.2 銀行との関係を構築する

  • 既存の金融機関で個人口座などを通じて、長期的な取引を行い信頼を築く。
  • 銀行の担当者と面談を行い、事業の説明を丁寧に行う。

4.3 書類を揃える

  • 会社登記簿謄本
  • 代表者の身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
  • 事業計画書
  • 取引先との契約書

5. ネット銀行の利便性と事業利用の課題

ネット銀行(オンライン銀行)は、手続きの簡便さやコスト削減の面で多くのメリットがありますが、事業用途では以下のような不便な点もあります。

5.1 振込限度額の制約

ネット銀行は、セキュリティ対策として1日の振込限度額が設定されている場合が多く、大口取引には不向きとなります。ネット銀行を申し込む際は振込限度額も確認しておきたいポイントです。

5.2 法人口座の利用制限

一部のネット銀行では、法人口座の開設が難しく、特に新設法人や個人事業主に対して厳しい審査が行われます。ネット銀行によって審査のポイントは変わってくるので、NGだった場合は他のネット銀行も検討しましょう。

5.3 現金の入出金の不便さ

ネット銀行には店舗がなく、ATMの利用に手数料がかかる場合が多いため、現金の入出金が多い事業には不向きです。飲食業や店舗がある小売業だと不便に感じる機会は多いです。

5.4 取引先の信用問題

一部の企業では、取引銀行がネット銀行のみの場合、信用力が低いと見なされることがあり、取引を敬遠される可能性があります。取引先から「実店舗のある金融機関」の口座を作ってください、と言われてしまうこともあります。業歴の長い企業との取引を始める際に言われることが多いようです。

5.5 海外取引の制限

ネット銀行の場合、海外への送金や受取りができないことがあります。海外との取引が多い貿易業などをされる場合は特に注意が必要です。

6. 融資コンサルタントに口座開設サポートを依頼するメリット

外国人が経営する会社であったり、事業規模が小さい企業だと、融資以前に口座開設が難しくなることがあります。このような場合、融資コンサルタントに口座開設のサポートを依頼すると以下のようなメリットがあります。

6.1 金融機関に取り次いでもらえる

特に外国人経営者の場合、一人で銀行の窓口に行くと、警戒されて手続きに時間がかかったり、結局、断られる可能性が高くなります。融資コンサルタントは金融機関と繋がりを持っていることがあり、担当者を取り次いでもらえることで、初回面談を断られる可能性が低くなります。

口座開設,銀行口座
ゆうちょ銀行での口座開設の注意書き。外国人の口座開設はハードルが高くなってきています。

6.2 スムーズに口座開設ができるようになる

融資コンサルタントに金融機関との対応を任せることで、事前に必要な書類や、面談の予約などを取り次いでくれることがあります。これにより面談回数が減ったり、口座を開くまでの時間が短くなることが期待できます。

6.3 融資が受けやすくなる

口座が開設できるようになると、融資の相談もしやすくなります。融資コンサルタントの方に融資もサポートしてもらえれば、口座開設から融資までをまとめて対応してくれます。

7. まとめ

マネーロンダリング規制の強化により、銀行口座の開設が難しくなっています。また、ネット銀行は利便性が高いものの、事業利用には一定の課題があります。

事業用の口座開設が難しい場合には、融資コンサルタントに相談するのも良いでしょう。

当事務所では、東京都内の金融機関との繋がりがあり、口座開設から融資までのサポートを一貫して行っております。お困りの方は問い合わせフォームよりご相談ください。